【BEPS2.0デジタル課税入門 #7】デジタル課税と世界共通の問題意識

【BEPS2.0デジタル課税入門 #7】デジタル課税と世界共通の問題意識

これまで、現在の国際課税ルール、デジタル経済の特徴、デジタル経済が国際課税ルールに与える影響、GAFAの租税回避スキームについて話をしてきました。

ここで、デジタル経済における国際課税上の問題点を改めて整理します。

世界共通の問題意識は、多国籍企業がタックスヘイブン国や軽課税率国に所得を移転させることで、税負担を著しく減少させている税逃れを防止させようというものです。

なぜ、それは問題なのでしょうか。大きく2つの理由があります。

一点目は、その国の税収不足に繋がるからです。多国籍企業が、タックスヘイブン国や軽課税国などに所得を移転させると当然その分その居住地国は税金をとることができなくなるので税収が減ります。これはその居住地国や市場国にとっては大問題です。

二点目は、競争条件の公平性が害されるからです。これは、たとえば、伝統的な製造業はPE課税ルールに基づいてPE課税を受けるが、グローバルなデジタル企業はPE課税ルールの適用を受けず税負担が低いので競争条件の公平性が害されるという点です。

そうなると、豊富な資金力をもっている会社はスキームを構築し、所得を低税率国に移転をすることで税負担を軽減することができる反面、豊富な資金力を持たない中小企業はそのような所得移転スキームを構築することは一般的に難しいので競争条件が公平とはいえず、中小企業は不満におもいます。

所得移転による租税回避が横行すると、真面目にビジネスをしている企業は馬鹿をみることになり、企業のやる気を削いで、ひいては企業活動の停滞を招くことになります。

上記2点があるため、不公正な税逃れは問題なのです。

現在の国際課税ルールの課題

では、多国籍企業がタックスヘイブン国や軽課税国に所得を移転させ、税逃れをしているその要因は何でしょうか。ここまで読んでいただいた方はもうお分かりかとおもいますが、大きく2点あります。復習になります。

一つ目は、「PEなければ課税なし」の国際課税ルールの機能不全です。デジタル企業のように物理的拠点をもたずにビジネスを行うことができる場合、課税根拠となるPE(物理的拠点)がないから課税できないという問題があります。

デジタル企業が市場国にリリースしているサービス(GOOGLEやFACEBOOK,AMAZON)を世界中の人が利用してGAFAは儲けているけれど、彼らはPEを持たないので当該市場国でPE課税を受けることがなく税金を徴収しがたい。

先ほどの競争条件の公平性を害する要因の一つです。また、デジタルビジネスを行う多国籍企業はこれを逆手にとって租税回避を計画することもあります。

二つ目は、移転価格税制における「独立企業原則」の国際課税ルールの機能不全です。もちろん、一定の場面においては独立企業原則が有効に機能しています。しかし、多国籍企業が、軽課税国やタックスヘイブン国に無形資産を移転させることを通じて利益移転をさせる局面においては「独立企業原則」が機能していないケースがあります。

なぜなら、これまで述べてきたように、無形資産はその企業固有のものであることから、参考となる市場価格を見つけることも難しく、無形資産の価値評価が難しいからです。

さらに、無形資産は物理的実体がないがゆえ、契約書の紙切れ一枚で、その無形資産の所有権などを他の企業に簡単に移すことができます。無形資産を低課税国やタックスヘイブン国に移転させることで関連する所得も移すことは容易にできます。

特に、デジタル企業において無形資産が果たす役割は非常に大きいので、無形資産をどのように評価するか、無形資産から生じる利益をどのように取り扱うかという問題はとても大きな課題です。 このように、現行の国際課税ルール上の課題を踏まえたうえで、これからの議論を深めていきます。

続きはまた次回。ではまた。