もう一つの国際課税ルールが「独立企業原則」です。このルールは、関連当事者間(例:親会社と子会社)での取引価格を、独立の第三者と取引するとした場合の価格(独立企業間価格といいます)と同じ価格で取引しましょうというルールです。
グループ会社間における取引は、親会社の意向ひとつで取引価格を決めることが容易です。例えば、親会社が子会社に販売する価格を通常より安くすれば親会社の売上は小さくなり通常より利益も小さくなります。一方、子会社は通常より安く買えるわけですからその分コストが低くてすみ、通常より利益が出ます。
これはグループ全体としてみれば、親会社の利益が子会社に移転したとみることができます。関連当事者はお互い一つのグループ会社なので価格を自由に操作することで、利益を他の国に飛ばすことが容易です。不当な利益操作に利用されやすいということです。それを防止するため、関連当事者間においては、独立第三者との間で通常行う取引条件と同じような条件で取引したものとして税務上計算するようにしたルールです。この独立第三者が行う取引価格のことを「独立企業間価格」と言います。
ものすごく単純化した例でお伝えします。
例えば、親会社が子会社に対して通常より安い30円で商品を販売したとします。これを子会社以外の独立第三者に販売するときは100円で販売しているとします。この場合、独立企業間価格は100円となり、子会社への販売価格30円との差額70円を親会社側で税務上加算するわけです。そうすることで、海外子会社への不当な利益移転を防止し、市場競争の公正性を守るというわけです。
つまり、移転価格税制における「独立企業原則」は、関連当事者間取引での利益移転防止機能があるということもできるわけです。

独立企業原則にはもう一つの機能があります。それは、企業利益を2国間で分配する機能です。ある国と別の国の間で、企業利益に対する課税権を分配する機能という側面をもっているということもできます。
関連当事者取引は利益移転に利用し易いという話を先ほどしました。例えば、税率の高い親会社の所在国から税率の低い子会社の所在国に利益を移転するとします。このとき不満・怒りを覚えるのはどちらの国の税務当局と思いますか。
それは親会社側の税務当局です。なぜなら、利益が海外子会社に移転しているということはその分、親会社所在地国の税務当局が課税権を行使して税金を課すことができる利益が移転しているということを意味するからです。それは親会社所在地国税務当局からしたら本来徴収できるはずの税収が徴収できなくなることを意味するからです。
そこで、親会社所在国の税務当局は、独立企業原則を主張して、子会社に移転した利益を取り返そうとするわけです。これは企業グループの利益を親会社と子会社の間で税務的な観点から適切に配分してくださいと主張しているとも言えます。
しかし、子会社所在国の税務当局もできることなら税金を多く取りたいと思っています。もし独立企業原則が適切に適用されたら、親会社所在地国と子会社所在地国の両方が納得できるようにグループ利益を配分することが期待されます。これが、「独立企業原則」が、両国間で法人利益に対する課税権を分配する機能があるといわれる所以です。
ここで、独立企業間価格の算定方法のひとつである、「利益分割法」をご紹介します。独立企業価格の算定方法にはいくつか方法があり、その中に「利益分割法」という方法があります。英語ではProfit Split Methodといい、「PS法」と呼ばれています。
ここでは「利益分割法」以外の他の算定方法については説明いたしません。「利益分割法」以外の方法も知るに越したことはないですが、デジタル課税の基礎、BEPS2.0の議論をより理解できるようにするという観点から、ここでは「利益分割法」の考え方について絞ってお話をします。
では「利益分割法」とは何でしょうか。 平たく言ってしまうと、「利益分割法」とは、親会社と子会社間が取引をして得た関連当事者間取引による利益の合計を、何らかの配賦基準を使って、親会社と子会社それぞれに帰属する利益を配分(分割)し、独立企業価格を算定する方法です。
ここで重要なポイントは2つです。
『どういう利益を』関連当事者同士で配分(分割)するのか、そして、『どういう配賦基準』を使って配分(分割)するのかの2つです。 つまり、「配分対象利益」をどうするか、「利益の配分基準」をどうするかの2点です。ここが、まさに世界が協議しているデジタル課税、BEPS2.0を理解するためのカギとなります
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